LM3886 x4 パラレル 完成!
北海道のK様のご依頼で作成しました。
出力 90Wx2 4Ω、 50Wx2@8Ω
ゲイン 20倍 (26dB)
周波数特性 5-50KHz
サイズ 230x231x88mm
K様のコメントです
音の線が太くて分厚いです、それでいて高音が綺麗です。大音量時に迫力があり、なおかつスッキリして聴きやすいです。
久々に音楽に没入できました。
時間と空間を超えてチャーリパーカー、マイルスデイビス、コルトレーン、オスカーピーターソン、ビルエバンスなどなどが
蘇るようでした。アルゲリッチ、村治佳織、矢野沙織、ムローヴァ、五嶋みどり、小澤征爾などなども生き生きとしています。
圧巻だったのはアバド指揮、アルゲリッチのピアノでチャイコフスキーのピアノ協奏曲1番を大音量でかけたときでした。
ピアノのガーンという低音の響きも高音の転がるような音色も素晴らしい!そしてフォルテシモでのオーケストラの咆哮!いま
まではうるさくてボリュームを絞って聴いていたのですが今回は全く大丈夫でした。
完成当初は低音の量感が物足りないとのご指摘を受けました。いろいろと調査検討を重ねた結果50Hzあたりからマイナス1.5dBで
周波数特性が下がっていることがわかりました。原因はフィードバックループ内のバイポーラ電解コンデンサのESR(直列等価抵抗)
であることがわかりました。BP電解コンデンサは構造上ESRが大きくフィルターのカットオフ周波数の計算どうりにはいかないよう
です。ESRは普通は高い周波数で目立ってきますが低い周波数でも大きくなり、インピーダンス特性に隠れて分からないようです。
数十から数百ミリオームのようですがそれでも低域のゲインに影響します。そこを改善し、かつ電源バイパスコンデンサを増強して
解決できました。やりとりに時間をかけましたが本質的な点での改善ができました。K様の耳の良さに感謝いたします。
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製作過程紹介
LM3886を片CHに2個、ステレオで4個使用したパラレルAMPです。パラレルは4オームや6オームなどの低インピーダンス
スピーカーをドライブするにはうってつけの方式です。スピーカーに電流が多く流せ、ICの負担が軽減されまた歪率や
ノイズがルート2分の一に低減します。二つのAMPをパラレルにするだけですがそのままですと両方のバランスがうまく
とれず、DCオフセットのばらつき、増幅率の微小な差で電流消費、温度上昇などが崩れてうまくいきません。
コツはコツは
1.すべての抵抗を±0.1%以内に選別する(1%ではありません)
2.ICのDCオフセットを最小にする
3.両方のAMPの出力は0.1Ω6W(1%以内)で結合する
4.電源、GND,信号の配線は均等にする
ケースはタカチを使います。少し値がはりますが、ヒートシンクと一体化
しているのでかえってコストパーフォーマンスがいいですし、強度やルッ
クスも結構いけます。サイズは230x231x88mmでコンパクトにまとめます。
電源部は完成しました。15,900uFを±に投入、合計で31,800uFです。トロ
イダルトランスは250VA,で2.3Kg、整流後の電圧は±38Vで4.2Ax2です。
かなり強力な電源となりました。
整流ダイオードはショットキバリア型、突入電流が少しあると思われますので大電流のものを選択しました。
ショットキバリアはダイオードのスイッチングノイズが少ないのでオーディオでは最近はポピュラーになって
きました。半導体技術の進歩により耐圧も上がり価格もこなれています。それをさらにアルミの板を加工して
シールドしてシャーシに実装しました。これは前回やってみて効果がありましたので今後ともやっていきたいと
思っています。
バックパネルです。
大型スピーカー端子でバイワイヤリングも可能です。
バナナプラグにも対応しています。
片チャンネルだけできました。
オシロで発振や周波数特性の異常がないかを確認してから実際のスピーカーで音を聴きます。
クリアでワイドレンジ感のある音です。テストスピーカーはスペンド−ルの3WAY SP-100
電源スイッチとパイロットランプを選びます。
平滑コンデンサが31,800uFありますしトロイダルトランスを使っていますのでON時のラッシュカレント
いわゆる突入電流が心配されます。ダイオードは新電元社のD6SBN20でせん頭サージ電流は120Aあるので大
丈夫ですが電源SWの接点が突入電流でくっついたり接触が悪くなったりします。またヒューズは定常時では
3AでいいのですがON時に瞬間的にもっと流れてだんだん細くなったり切れたりします。ON時の瞬間のことで
すが毎日繰り返しますとセットの信頼性に問題が出てきます。
電源SWは125Vで5Aのものが一般的ですがこれを使って前に接点がくっついて離れなくなったことがあります
のでもっと大きいものを使いたいところです。15Aのものがありますが形がちょっとデザインに合わないので
いろいろ秋葉原を探しましたところ黒くて出っ張りが小さくてよさそうなものを見つけました。パイロットラ
ンプが付いていないので別に発光ダイオードを使うことにします。
ヒューズは3A 125Vのスローブロウタイプを採用します。これは瞬間的なラッシュカレントではすぐ切れません。
定常時で3Aを超えますと切れて保護します。
SWは、真ん中のものを採用、125V 15Aの定格です
左も15Aですが大きすぎてデザインが武骨。
パイロットランプは右端のちいさな青色発光ダイオードです。
こんな感じになりました。LEDは少し落としこんで高級感を出しました。
両方のチャンネルができました、ほぼ完成です。
早速試聴です、パラレルらしい力強くクリアーな音です。聴感上の周波数レンジも結構いいです。
ドラムやウッドベースがくっきりタイトに響き、サックスは明るくつやがあります。女性ボーカルはダイナミックレンジが
広くシャウトしてもささやいても破たんしません。
あとはしばらく聴いてみて、動作の安定性、発熱、パワーON-OFF時などの過渡期の問題、その他信頼性などに問題がないかな
どを調べます。 それから周波数特性、ひずみ率、などの測定をして、ドキュメントを作成します。